窓から見える青空が少し翳ったように思える。
自然にため息が漏れる。
寝転んでいると空しか見えなかった。
あわただしく過ぎた2週間。
上京そしてアパート探し。
大学に近く、これからの生活に便利な場所。
1週間探し回り、今いる高田馬場に決めた。此処からだと大学のある江古田までは30分でいける。アルバイトをするにも便利な場所に思われた。
家賃もあと2年程で取り壊すという事で安く、敷金・礼金などもいらなかった。
後の事はその時に考えれば良い。
自分のペースもようやく取り戻しつつあった。
あの締め付けられるような胸の痛みも、後頭部の灼熱間感も今は落ち着いている。薬も飲んでいない。
ただ違うところで蠢いている何かがあった。胸の痛みとか灼熱感ではなくはっきりと説明できない圧迫感とか不安感。
それらが何時のまにか身体の奥底に棲みついている。そんな気がしてしかたなかった。

「やっぱり受験ノイローゼやった。もうすぐ何ともなくなるて・・」
そう自分に言い聞かせる。
それなのに薬だけは買っていた。
はっきり言えば薬に依存し始めているのだが、そういう意識を否定することで自分をとりつくろうとしていた。

起き上がると、部屋をでた。
路地のような細い道をしばらく歩き、大通りにでる。
まだ時間は3時を過ぎたばかりというのに何という人の多さだろう。
ぼくは人波の中に入るのに躊躇していた。
「これが東京・・」
嫌でもこの人波のように混雑している場所で生きていかなくてはならない。
『はよ慣れな・・』
『縄跳びに入る要領やな・・』
そう思いながらきた道を戻り始めた。
『嫌やなぁ。』
人ごみがすごく苦手になっている。
そういえば電車も・・
大きく首をふった。
『明日は○○出版に行かな・・」
大学が始まる前に必ず決めておかなくてはならない事があった。
『明日はどうしても・・薬飲んでもや』

アパートに帰る道。
桜の花びらで真っ白に見える。
春が逝く。
風が吹き花びらを巻き上げる。
その花びらが雪のように身体にまとわりついてきた。

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