背中を向けたぼくのTシャツを看護士がまくった。
E医師の親指が腰の上あたりを強く押す。
痛みが奔った。
小さく呻く。
「痛い？」
ぼくは頷いた。
そしてベットにうつ伏せに寝かされると、痛いと言った部分から範囲を広げて押していく。
押されると痛みはあったが、最初に押された部分ほどの事はない。
５分程、触診されてからぼくは椅子に戻った。
「痛みは何時もある？」
「い・いえ、時々です･･･す・すぐに治るし･･」
E医師はカルテに今の事を書き加えているようだった。
E医師がぼくを見る。
「神経科のB先生とも話したんだけど、早期の入院が必要だね。まだ夏休みが残ってるし、今のうちにね」
「入院･･･」
「良い結果が出たとして２ヶ月･･それなら大学の方も何とかなるだろう」
「ち・ちょっと待って下さい･･い・いきなりで･･」
「そうだね。でも、今の状態はさっき話したとおりだ。少しでも早い方が良い」
ぼくは頷くより仕方なかった。
「このJ大付属でも、君の行ってる大学の付属病院でも良い･･･B先生はちょっと違う意見だけどね」
「び・B先生は、ど・どんな･･･？」
「うん･･ぼくは神経的なことは良く分からないけど、君は東京にすごいプレッシャーを感じてるらしい。入院するなら東京を離れて実家近くが良いと言うんだ」
「実家近く･･･」
「でも、兵庫県に今の君に合う病院がなくてね。京都になるけど・・・とにかく良く考えて、できるだけ早く返事を下さい。診断書の事もあるし」
「は・はい･･･」
ぼくはゆっくり立ち上がった。
診察室を出て、受付に行き、病院を出る。
E医師に入院と言われてから、ぼくの頭の中は混乱している。
だから受付でどれだけのお金を払ったのかも覚えていなかった。

蝉の死骸に何時の間にか蟻が群がっている。
ぼくは目を逸らすと逃げるように歩道橋を後にした。

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ああああああああああああ