ぼくは2tトラックの荷台にいた。
荷台にはもうかなりのゴミ袋がのっている。正規のゴミ収集車ではなかった。
新宿の夜は不夜城と言われるぐらいに賑やかで、朝までやっている店が多い。だが中にはAM1時・2時で閉める店もある。
そこのゴミを収集して回るのだ。
運転してるのが社長という訳だが、最初は知り合いの店から頼まれたらしい。
後は口コミだ。
そのゴミをどう処理してるのかよく分からなかったが、かなり儲かってると言う。
深夜ということもあって、ぼくのバイト料も多かった。
2時間程のバイトだったが、一ヶ月生活するのに十分だった。当時の学生は大体が3〜4万円あれば生活ができた頃である。
深夜のバイト、そして肉体労働。
最初の計画とは大きな違いだったが、今思うとこれで良かったのかも知れない。
対人関係のないアルバイトは気が楽だった。
それでなくても薬の量が増えている。
一錠でいいところを今は10錠飲まないと効かなかった。
飲めば気分も楽になるし、仮面の部分で痛む後頭部、胸部痛も嘘のように治る。
だが、飲んだ後の気持ちは最悪だった。
飲まなければ何もできない情けなさが、鋭い棘となってぼくを傷つけていた。

荷台がゴミ袋で一杯になったトラックを見送って、ぼくはバイクを置いてある屋台まで歩いた。
流石にこの時間になると人通りも少なくなっている。
屋台も赤提灯の燈を消していた。
酔客が一人眠っていた。
ぼくは終わる準備をしてるオヤジに声をかける。
オヤジは中腰の姿勢でぼくを見るとうなずいた。
こんな生活を4年間続けるのだろうか。
今はただ精一杯で答えもでてこない。
ぼくは着替えると、バイクをまたいだ。
もうヘルメットをつけるのも面倒だった。
「気をつけな」
ぼくはオヤジに手を上げるとゆっくりバイクを発進させる。
夜明け前の最後の闇がようやくこの街を覆い隠そうとしていた。


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