その日はまさに春爛漫。
窓から見える空が霞んで見えた。
4畳半の和室。
あるものといえば机と布団だけ。
大学に近いというだけでこの下宿を選んだ。

「東京」小さく言ってみる。
あんなに憧れていたのに、あんまり感激がないのは何故だろう。
とにかく反対された。
希望する大学も学部も・・そして東京も。
経済的なこと、そして将来の就職のこと。
特に将来の事では猛反対だった。
「そんな学部を出て何処に就職するんや」
「才能だけで食べていけるのは一部の人間だけや。お前にその才能があるんか?」
確かに言われればその通りで、自分でも自信はない。
ひょっとしたら東京に出たいだけなのかも知れなかった。
だけど、その大学に入りたいのも事実だし、学部にしてもそうだ。
「夢を追ってはいかんのか?」
夢で飯は喰えない・・
親の心配はもっともと分かっている・・・だけど。
家はサラリーマン家庭。そんなに裕福でもない。
親からしてみればもっと現実を見なさい、ってことと判断できる年だろうという事なんだろうが。
何処かで反発している・・そうじゃなくて・そうじゃなくて・・はっきり言葉に出来ないのが歯痒かった。


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