上京して以来、何時も逃げ込もうとしていた気持ち。 そして余計な物を背負い込んでしまった現実。 だが、生きていかなければならないのも現実だった。 生きていく・・ はっきり云えばまったく自信などなかった。 ただ流れる時間のなかであがいているだけなのかも知れなかった。 「また後退するかも知れんな・・」 ぼくは唇を噛んだ。 クラッチを握り、ギアを入れた。 それだけでググッーと前に出て行こうとする。 前ブレーキをきかせる。 「ほんまじゃじゃ馬やな・・」 3台横のナナハンが綺麗なマルチ音を奏でる。 チラッとそのバイクを見た。 「スピードじゃ負けるけどな・・負けんものもあるわ」 クラッチをつないだ。 パワーとブレーキを開放する。 瞬間前輪が浮いた。 「とにかく宣戦布告や」 何もかも蒙昧としている。 余計な物が邪魔をする。 そんな中でぼくは何処へ向かっているんだろう。 ぼくに今あるのは空元気だけのような気がした。 |
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